池上秦川邸スイーツアンドメモリーズ
「総社アートハウス」へ
建築家松本剛太郎さんへ、秦川邸の今後を委ねた。我々の手を離れ、松本さんのリノベーションが始まった。榎忠さんの現代アートの展示や、蔵内でコンサートなど新しい活用が展開されている。
古民家を開き、ここで何をするかを考えながらの4年間。
播磨靖夫さん(たんぽぽの家代表理事)が、「日本には二つ文化があって一つは制作文化。もう一つは醸造文化とか発酵文化。欧米型の文化は物を作る文化なんです。人工的に作る。こういうやり方は必要な時もあるけど、日本の文化のベースは醸造文化・発酵文化ですね。ゆっくりと成る・生む・結ぶですよ。岡山のアートリンクの活動は人が集まってペアになり、何かを生み出し、そこから人を結んでいる。」と言われたことがある。
一般的にプロジェクトは年度ごとに期間限定で答えを出すことを求められ、事業をして報告書を提出して終わるというケースが多い。しかしそうはいっても、人が集まって、物事を決めて実行するには時間がかかる。じっくりと関わりを繋げていきたいと、それぞれの個々人の思いを繋いで文化として発酵させていきたいと、「つくりてをつくる」という企画間交流を行ってきた。青森、隠岐、大分と人の交流も生まれた。場を開き、「まずは、秦川さんの気配を感じてみる」、「改装工事ならぬ昔の家に戻す工事をしよう」「タタラ製鉄をしている地域の高齢者の見学をしてみよう」と言うように、話し合いの中から生まれたことを実行まで組み立てながら、そこに関わりをつくることを目指した。繋がりの発見もあった。島根県隠岐郡西ノ島にある焼火神社の分社が、秦川邸の裏にあったのだ。北前船航路、高梁川を行き交っていた高瀬舟の航路でのつながり。今は見えなくなった道が、芸術文化の視点で見えてきた。